狛江と小田急線

東京都心に隣接しながらも、のどかな農村だった狛江が、水と緑に恵まれた住宅都市に発展した背景には、市内を走る唯一の鉄道、小田急線を抜きにしては語ることは出来ません。

そんな小田急線が新宿―小田原間の82.8kmで開通したのは昭和2年(1927年)4月1日のことでした。開通当時の正式名称は小田原急行鉄道でした。

全線が複線で、高速の電気鉄道を走らせるというのは、当時としてはとても画期的な鉄道だったそうです。さらに、約1年半という短期間で、多摩川の架橋などの難工事を一気に竣功したというのも驚きですね。4月1日の開通に間に合わせるために、最後の3日間は文字通り不眠不休で工事が続けられたそうです。その熱心さに鉄道省の監督官は、手落ちを許してしまい、設備が完全に整わないままに4月1日の開業を許してくれたそうです。今では考えられませんね。

小田急線多摩川橋建設

大正15年(1926年)に行われた多摩川での架橋工事。
多摩川、相模川、酒匂川は小田原急行が渡河する三大河川。多摩川の橋梁は493.8mでした。
※『狛江の発展と鉄道』より

こうして開業された小田原急行でしたが、当初の路線計画には、狛江村内の停車場は『多摩川畔停車場』のみで、村役場や小学校が立地していた村の中心部に停車場の設置が予定されていませんでした。
距離、速力、カーブなどの関係から停車場新設の余地はなく、また停車場の位置変更も難しいということでした。
しかし、村の有志は多摩川畔停車場だけでは不便であるとし、村の中心部に停車場を新設してもらえるよう、寄付金の申し出を行いました。
その結果、小田原急行開通から遅れること2ヶ月、6月1日に『狛江停車場』が開業となりました。

昭和狛江駅

昭和12年(1937年)の狛江駅。
※『狛江の発展と鉄道』より

開業時の小田原急行は、新宿―稲田登戸間がすでに複線で、10分間隔で運行され、所要時間は30分だったそうです。現在の各駅停車での所要時間とあまり変わらないんですね!
しかし開業2ヶ月後には新宿―稲田登戸間の運行本数は半分に減り、経堂―稲田登戸間は20分間隔に削減されました。さらに昭和3年(1928年)5月以降には、経堂―稲田登戸間は朝夕を除いて、半数の列車を不定期で運行することとなりました。
これは沿線のほとんどが未開発の地域だったことと、大正後期からの不況に加え、昭和4年(1929年)10月のニューヨーク株式市場の大暴落から起こった世界恐慌という厳しい時代背景があったからでしょう。
しかし箱根や、江ノ島、相模川、大山、そして多摩川へ行楽客を呼び込むことなどによって乗客の増加に努め、今日では沿線各地の開発も進み、通勤・通学、レジャーのために欠かせない交通機関となりました。
戦後の狛江は住宅都市として住宅や団地が建設され、都心に勤める人たちのベッドタウンとして飛躍的に発展しました。
都心へのアクセスの良さも、狛江市の大きな魅力の一つですね♪

以下、『写真で見る昭和の狛江』『狛江の発展と鉄道』より小田急線にまつわる画像を集めてみました。ありがとうございます!

小田急線狛江通り踏切

狛江通りの踏切。昭和10年代

小田急線狛江

六郷用水を渡る小田急線上り電車。昭和10年代

小田急線狛江駅

昭和30年代の狛江駅上りホームと電車。

小田急線狛江駅

昭和40年代の狛江駅。

小田急線狛江駅

狛江駅の臨時改札口。昭和45年(1970年)

小田急線狛江駅

狛江駅前の踏切。昭和48年(1973年)

小田急線狛江駅

昭和62年(1987年)の狛江駅。

小田急線狛江駅

狛江駅下りホームとロマンスカー。昭和62年(1987年)

小田急線狛江

いちょう通りの踏切。昭和43年(1968年)

小田急線和泉多摩川駅

昭和30年(1955年)頃の和泉多摩川駅。

小田急線和泉多摩川駅

こちらは昭和62年(1987年)の和泉多摩川駅。上の画像と同じくらいの位置でしょうか。どちらも狛江駅方面を望んでいるようです。

小田急線和泉多摩川駅

時代が前後しますが、昭和25年(1950年)の多摩川堤防上の踏切。終戦直後で標識は英文での表記ですね。

小田急線和泉多摩川

多摩川鉄橋を渡る小田急線。昭和35年(1960年)頃。

小田急線和泉多摩川駅

昭和43年(1968年)の和泉多摩川駅改札口。

小田急線和泉多摩川駅

和泉多摩川ホームから登戸方面を。昭和62年(1987年)

小田急線喜多見駅

ちなみにこちらは喜多見駅。昭和27年(1952年)頃

小田急線狛江駅

喜多見駅。狛江駅方向を望む。上りホーム階段右側に駅舎がありました。昭和28年(1953年)

小田急線喜多見駅

昭和50年(1975年)頃の喜多見駅。狛江駅方向を望む。上の画像と同じくらいの位置でしょうか。

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